視能訓練士って知ってる?医療系資格の中で知名度の低い視能訓練士について分かりやすく解説

あかまさん。

はじめまして。あかまと申します。10年以上視能訓練士として勤務している私が視能訓練士について分かりやすく解説していきますね。

医療系資格といえば、“看護師”、“薬剤師”、“理学療法士”、“作業療法士”などは聞いたことがあるかと思います。

しかし「視能訓練士」と聞いてピンとくる人はなかなかいません。私の友人に話す際も覚えてもらえないことがしばしば。そんな知名度の低い視能訓練士について、お仕事内容メリットデメリットについて詳しく解説していきます。

視能訓練士について興味がある、医療系資格が取りたいけど、どんな職業なのだろう?という疑問が解決しますのでぜひ最後まで読んで視能訓練士について理解を深めて下さい。

それではどうぞ。

目次

視能訓練士になるためには

視能訓練士は国家資格です。なので、厚生労働省が毎年1回施行する視能訓練士国家試験に合格し、厚生労働大臣から認められた者に与えられる資格となります。

視能訓練士国家試験を受けるのにも、ただ申し込みをして受けられるというわけではなく、まずは視能訓練士養成課程のある4年制大学または視能訓練士養成専門学校にて3年間以上勉強をしなければなりません。

または、大学、短大、看護師養成施設、保健師養成施設などで2年以上学んだ後、文部科学大臣または厚生労働大臣指定の視能訓練士養成校にて1年以上学ぶ必要があります。

視能訓練士の人数

視能訓練士の知名度の低さは、世に出ている視能訓練士の人数の少なさによるものです。看護師さんや薬剤師さんが知名度が高いのは、その人数の多さ。

2021年度の国家試験の合格状況を表にまとめてみました。

薬剤師看護師視能訓練士
受検者数14124名65025名842名
合格者数9607名59344名773名
進路ナビ

見てお分かりいただけるように、圧倒的に視能訓練士の人数が少ないのです。そうなると気になるのが合格率ですよね。次は、視能訓練士国家試験の合格率についてお話します。

視能訓練士国家試験合格率

視能訓練士国家試験の合格率は毎年変わらず90%前後で推移しています。過去5年分の視能訓練士合格率をまとめてみました。

2018年2019年2020年2021年2022年
受検者数910人834人837人850人842人
合格者数889人819人804人774人773人
合格率97.7%98.2%96.1%91.1%91.8%

視能訓練士国家試験の合格率は、過去5年間を見ると90%台となっており、簡単そうに思われるかもしれません。しかしどの医療系国家試験にも言えることなのですが、国家試験に合格する見込みのない学生は国家試験を受けさせてもらえないのです。

なぜそのようなことが起こるのか分かりますか?医療系の養成校は自分の学校の合格率を100%にしたいからです。

入学したいと考えている養成校の国家試験合格率が80%であったらどうでしょう。“この学校で学んでも、もしかしたら自分が20%の中になってしまうかも”と思いませんか?

であれば「国家試験合格率100%」と謳っている養成校を選びますよね。国家試験合格率の低い養成校はそもそも選ばれないのです。そのため養成校は、国家試験合格率という実績を気にして、見込みのない学生には国家試験を受けさせない、ということです。

視能訓練士国家試験合格率が高いのも、合格する見込みがある学生たちばかりが受検しているからなのです。

視能訓練士になるために必要なこと3選

必要なこと

視能訓練士を目指すにあたり、視能訓練士として10年以上臨床経験を積んできた私が考える“視能訓練士になるために必要なこと”を厳選して、特に大事だと思う5つに絞りました。

  • コミュニケーション能力
  • 自主的に勉強する
  • 諦めない心
  • 眼に興味がある
  • 人の役に立ちたいと思うか

どれも視能訓練士には必須のスキルなので、ひとつずつ解説していきます。

コミュニケーション能力

先ほどもお伝えしたとおり、視能訓練士になるためには視能訓練士国家試験に合格する必要があります。その為に養成校で学び、知識と実技を身に付けます。学内で行われる実習では、クラスメイトとコミュニケーションを取りながら、検査実習や機械の操作を行っていきます。その時に、友達や先生とコミュニケーションが取れなくては何も学ぶことができませんし、何もできずに終わってしまいます。

就職してからも言えることなのですが、視能訓練士という職業は、患者さんはもちろん、眼科の医療スタッフともコミュニケーションを取らなくてはなりません。施設によっては問診を取ったり、お話好きのお年寄りの相手になったりします。

そのためにもコミュニケーション能力というのは、学生のうちから身に付けておきたい必須のスキルと言えるでしょう。

自主的に勉強する

どの分野でも言えることですが、自主的に勉強ができてなおかつ継続できる人は最強です。

視能訓練士を目指して養成校に入ったのは良いが、勉強しなければ卒業すら危うくなります。養成校は、入学よりも卒業のほうが難しいと言われている理由がこれです。

視能訓練士養成校に入学した頃は、志高く将来に胸を躍らせていたことでしょう。しかし、日々学んでいくうちに“思っていたのと違う”、“難しすぎて勉強に付いていけない”などと感じて、勉強を辞めてしまってはいけません。

そうならないためにも、講義の内容で分からなかったところは教員に聞いたり、その日のうちに復習しておいたりという対策が必要です。それを継続できれば視能訓練士への道が拓けることでしょう。

諦めない心

継続して勉強をすることにも繋がるのですが、やはり途中で諦めてしまってはダメです。講義で分からなかったところをそのままにしておいたり、遊びやアルバイトが楽しくて勉強自体を諦めてしまったりすることは非常にもったいないこと。視能訓練士を目指すと決めたのであれば、最後まで諦めずに突っ走らなければなりません。

それができないようなら、最初から視能訓練士を選択しないほうが良いです。一度きりの人生、ムダにしないためにもよく考えて進路選択をしましょう。もう高校を卒業した大人なのですから、自分で選択する能力がありますからね。

眼に興味がある

視能訓練士という職業を知り、とても魅力的に感じたかもしれません。養成校に入り、勉強を継続し、視能訓練士国家試験の合格率も高く、自分にもできそう、眼科の検査員でしょ?なんか簡単そう、と思われた人もみえるかと思います。しかし、ひとつ落とし穴があります。それは、眼に興味がないと何も面白くないという点です。

視能訓練士養成校にて3年もしくは4年間、ずっと“眼”のことについて学びます。と、言っても全身のことや、心理学、医学英語などの講義はありますが、ほとんどの講義が“眼”のことについてです。ましてや、卒業後の進路も眼科ですので、視能訓練士として働いていくのであれば一生“眼”からは離れられません

途中で“眼”に興味が無くなってしまった場合、残りの学校生活はとても無意味なものだと感じるでしょう。1年、2年棒に振るくらいなら、よく考えてから判断した方が良いですね。

人の役に立ちたいと思うこと

医療を志す人に進路選択のきっかけを聞くと、一番多いのは、“人の役に立ちたかったから”という理由です。

この理由からも分かるとおり、視能訓練士を志す人も人の役に立ちたい、困っている人を助けたい、というように他者への貢献を理由に挙げる人がたくさんいます。

そして、視能訓練士という職業は、患者さんの役に立つ職業であり、患者さんからも感謝され、とてもやりがいのあるお仕事です。患者さんの喜んだ顔や、「ありがとうね」の一言で、“自分は人の役に立っている”、と、自己肯定感も高まります。

少しでも人助けをしたいと思うのであれば、天職だと思うこと間違いなしです。

視能訓練士のメリットデメリット

メリットデメリット

次は、視能訓練士についてメリットとデメリットについてお伝えしていきます。視能訓練士として10年以上眼科に勤務をし、今もなお眼科勤務を続けている現役視能訓練士である私の考えでお話します。

どんなに魅力的で華やかに見える職業であっても内部ではどうなっているのか分かりません。表面だけを見ていて失敗しないためにも、ここで視能訓練士のメリットとデメリット両方を知った上で選択肢のひとつにしていただけると嬉しいです。

それでは、どうぞ。

視能訓練士のメリット

  • 残業が無い
  • 感謝されるのでやりがいを感じられる
  • 国家資格のため、一生ものの資格になる

残業なし

視能訓練士は主に眼科に勤めるため、当直や夜勤がありません。眼科に入院設備がほとんど無いためです。眼科の手術は入院するほどのことはありませんし、せいぜい翌日もう一度診察に行く程度です。なので、その日の患者さんの診察が終われば退勤します。

例えば18時受付け終了の眼科だった場合、17時55分に受付けをした患者さんは検査、診察、会計まで終えるのに18時を過ぎますよね。そのくらいの残業はあります。混み合っている場合でない限り、たいてい30分以内には終了し、帰ることができるので自分の時間が増えますし、お子さんのいる女性でも働きやすい職種と言えるでしょう。

感謝されるとやりがいを感じられる

視能訓練士としてたくさんの患者さんと接してきて、とても嬉しい瞬間というのが、患者さんから感謝を伝えられた時です。定期的に来院される患者さんには顔を覚えてもらえますし、気さくに声をかけていただくこともしばしば。忙しい毎日を過ごす中で、患者さんに「いつもありがとう」「〇〇さんに検査してもらえると安心する」などと言われると視能訓練士という職業に就いて本当に良かったと実感します。

どんなに辛く大変な時でも、患者さんからの嬉しい言葉があったから今までやってくることができたと言っても過言ではありません。何気ない一言でも人を救うことができるのです。

国家資格なので一生もの

視能訓練士と類似した資格で、“眼科検査員(OMA:ophthalmic medical assistant)”という資格があります。OMAは国家資格ではなく、日本眼科医会眼科医療従事者委員会の定めた資格となり、現在では廃止されています。

たいして視能訓練士(ORT:orthoptist)は国家資格なので民間の資格とは違い、一生ものの資格です。ですから視能訓練士資格取得後は視能訓練士として一生働くことができますし、何より自慢になります。世間からしたら医療系の国家資格所持者というだけで一目置かれること間違いなしです。

視能訓練士デメリット

  • 眼に興味がないと続かない
  • 眼科でしか働けない
  • 時期によっては混雑することがある

眼に興味がないと続かない

視能訓練士になるために、養成校にてたくさん「眼」のことを学びます。もちろん、全身のことを学びますが、ほぼ「眼」のことです。日々の講義で「眼」のことを学び、視能訓練士国家試験に合格、晴れて視能訓練士として眼科で働きだしたとして、実はまだまだ「眼」のことを学びます。

患者さんというのは、講義で習ったこと、教科書に載っている通りにいかないことも多く、その都度調べたり勉強したりしなければならないのです。ですから、ここでも「眼」の学びは終わりません。

医療業界の進歩はめまぐるしく、日々勉強だと言えます。視能訓練士として働いていくのであれば「眼」の学びは切っても切り離せないこと。「眼」について興味が無くなってしまうと視能訓練士として働いていくのは困難と言えるでしょう。

眼科でしか働けない

視能訓練士というのは、大きい病院であれ、小さい病院であれ、「眼科」に勤務します。看護師さんが、内科に勤務したり、整形外科に勤務したりというように病院を選ぶことはできず、視能訓練士は「眼科」のみとなります。

たまに「眼鏡店」や「医療機器メーカー」などに就職する人もいますが、その場合、視能訓練士としてではなく、一般人として雇われ、視能訓練士としての知識があるので全くの未経験者よりは知識面で有利、というくらいで、お給料が高くなる、手当が付く、等はあまり期待できません。

つまり、視能訓練士は眼科に勤めるのが最良の選択となります。

時期により混雑する

患者数は、勤める眼科の立地や、総合病院、大学病院、クリニックなどにより差がありますが、時期により混雑する時期、閑散とする時期があります。混雑する時期とは、「花粉症の時期」です。冬の終わりから春にかけて、目のかゆみ、目の充血で来院される患者さんが急増します。昨今では小学生以下の子どもの花粉症も多く見受けられます。

次に混雑する時期は「学校検診」です。小学校、中学校、高校で行われる学校検診の視力検査でひっかかり、眼科受診を促す用紙を持った子どもが急増します。子どもの視力検査は一般の外来患者さんとは少し違い、より丁寧に検査をしなくてはならない場合があるので時間もかかります。ですからこの頃は、一般外来の患者さんをお待たせしてしまうこともしばしばあります。

まとめ

まとめ

今回は、「視能訓練士」について、必須スキルや、メリットデメリットを分かりやすく解説してきました。

まだまだ知名度も低く、世の中に浸透していない医療系国家資格ですが、これを見て少しでも多くの人に知ってもらえて興味を持っていただければ幸いです。

そして、視能訓練士という国家資格を目指す人が増えてくれればいいな、と思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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